1688人が本棚に入れています
本棚に追加
慣れない、肌がぬかるんでくような蒸し暑さ。
「……」
1人取り残されたあたしは、青いヘルメットを深く被り直し、狭い座席に腰を沈めた。
「……ふ、う」
無意識に歯の隙間からくぐもった声が漏れた。
セメントや朝顔の種、スコップなどを買いに行ったナオ君。
爽やかなナオ君スコップや苗がを見れば、店員さんは彼を「純情無垢な好青年」と捉える。
だけどナオ君にとって、
いかに印象薄い庭師客という演技を全うするのかが、試練で。
朝顔じゃないの、埋めるのは……。
殺人帳消しの買い物なんて、お願いだから最初で最後の買い物であってほしい。
お願い、かあ。
あたしは晴れ上がった星空を見上げた。
ねえ、織姫さん彦星さん。
こんなはずじゃ、当然なかったよ。
他人まで巻き込んじゃって、もうあたし……。
「ねえねえ、青ヘルメットの君」
最初のコメントを投稿しよう!