天の川

44/68
前へ
/338ページ
次へ
慣れない、肌がぬかるんでくような蒸し暑さ。 「……」 1人取り残されたあたしは、青いヘルメットを深く被り直し、狭い座席に腰を沈めた。 「……ふ、う」 無意識に歯の隙間からくぐもった声が漏れた。 セメントや朝顔の種、スコップなどを買いに行ったナオ君。 爽やかなナオ君スコップや苗がを見れば、店員さんは彼を「純情無垢な好青年」と捉える。 だけどナオ君にとって、 いかに印象薄い庭師客という演技を全うするのかが、試練で。 朝顔じゃないの、埋めるのは……。 殺人帳消しの買い物なんて、お願いだから最初で最後の買い物であってほしい。 お願い、かあ。 あたしは晴れ上がった星空を見上げた。 ねえ、織姫さん彦星さん。 こんなはずじゃ、当然なかったよ。 他人まで巻き込んじゃって、もうあたし……。 「ねえねえ、青ヘルメットの君」
/338ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1688人が本棚に入れています
本棚に追加