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トンネルの反響のように低くいやらしいトーンの声が、右側から聞こえた。
警察?じゃなさそう……。
誰?
あたしはヘルメットを被ったまま振り返る。
そこには、オレンジのアロハシャツにダボダボのジーンズを履き、分厚い唇を緩めるロン毛の男がいた。
髪の毛は黒だけど、肩まで長さがあった。
歳は20くらいで、いかにも夜公園で遊んだり騒ぐヤンキー。
「な、何ですか…?」
「いやあ、ちょっとさあ」
手ぶらでロン毛の男は、右の口角をぐぐっと釣り上げたまま、バイクに近づいてきた。
ズボンの裾をズルズルと引きずるチャラさ。
嫌な予感が、ドックンドックンと心臓の波打ちを炸裂させる。
ドックン……
ドックン……
見られてませんように。
あたしが殺してたとこ、見られてませんように。
神様!!
右に顔を向けたままのあたしが目をぎゅっと瞑った時。
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