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フッ……。
ラケットを振った時のような、風を切る音と同時に。
「ぐはっ!!」
肉と歯の砕けるような生々しい音と共に、男の奇声が響いた。
男は道路に頭をすり付け、「歯が…歯が」と呻きながら、真っ赤な口を手で覆っていた。
「てめえ何してんだよ!!」
真横で、少量の血の付いたビニール袋を抱えたナオ君が叫んでいた。
ホームセンターから帰ってきたナオ君は、今青筋を所々浮かべている。
「はあっ、はあっ、ルコちゃん、大丈夫!?」
「……え……あ」
あまりにいきなりすぎて、言葉が失せた。
多分、ナオ君はシャベルが何本か入った袋を男目掛けて大きく回し、遠心力で男の右頬に一撃を与えた。
強烈に。
息が荒いのは、絡まれてるあたしに気付いて、駆け付けてくれたんだ。
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