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まいていた人影も、ここまでくればきっと。
「いない……」
帯できつく押さえた胸を撫で下ろす。
コツ……ン。
「!!」
背後からの足音によって、あたしの表情は豹変する。
重ね着の浴衣が暑くて、背中がぐしょ濡れに変貌しつつある。
おまけに冷や汗も、こめかみを伝い目にしみた。
後ろに、いる。
3日前からの、些細な異変。
口が半開きなあたしは袖を振りながら、下り坂を一気にかけ降りた。
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