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「うぜえな、ったく」
やれやれとはんば呆れた様子で、テツローさんは迷彩柄のヘルメットをナオ君に向かって投げた。
「さんきゅ」
軽快にスマイルを向けたナオ君だけど緊張感ゼロって訳じゃないらしく、額に汗を浮かべている。
夏の暑さじゃない。冷や汗。
3人共靴を履き終え、テツローさんから順々に車から外に出た。
車の中がクーラー効いてたから、暑い。
暗闇の中渡された懐中電灯をつけると、見渡す限りのツチ、キ、土、木。
まるで樹海。
『雨のせいで土砂崩れする心配がある反面、穴を掘りやすいメリットがある』
と、林の脇に車を停車させながらテツローさんは言った。
スコップシャベルが一式つまった袋を、あたしは車から抱き抱える形で引きずり、地面に置いた。
「なあテツ、山に埋めるんじゃ、セメント必要ないんじゃねーか?」
よいしょ、とナオ君がセメントの袋を抱えながら、テツローさんに尋ねた。
テツローさんは無表情であたしに渡しながら、
「それは明日別の場所で使うもんだ。戻しとけ」
と、平然と言った。
林の中。
ありとあらゆる道具が揃い、地面に3人分の足跡がつく。
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