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テツローさんが用意してくれたスニーカーを泥に沈ませると、ズブッという気持ち悪い足の感覚。
「吐くなよ、吐いたら計画はパーだからな」
横を通りすぎるテツローさんの一言に、あたしは涙目でうなずいた。
「こことかさ、いんじゃね」
息を吐くように呟いたナオ君の声は、甘い綿菓子の声ではなく、ゾクッと震える低い声だった。
「そうだな。この辺りならまあ」
シャベルを土に突き刺したテツローさんが、軽くうなずいた。
そして懐中電灯を切り株に置き、作業が始まった。
「ごめんなさい……」
シャベルで掘ってる最中、知らぬ内にあたしは、2人に謝っていた。
だって謝らずにどうしろと言うの?
そんな感じだった。
機械的に穴を掘り続けるテツローさんからの返事は、
「謝る暇あんなら掘れ」
で、ナオ君は、懸命に土を掻きながらの、
「頑張ろ」だった。
そして。
一時間ずっと、無言で、
あたし達3人は、泥まみれになりながらその場所に穴を掘り下げた。
大の大人2人は易々入るスペースを。
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