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行き止まりの道には、右手側にも左手側にも細い道が通っている。
あたしは右を曲がった。
ジンジン熱い痛みが、足の親指と人差し指から全身に上がっていく。
痛い。
でも逃げなきゃ
でも痛い。
息を精一杯切らし後ろを振り返ると、男の影に一筋の不自然な光が見えた。
ナイフか包丁かは定かではないが、鋭利な刃物ということは分かる。
殺される。
どうしようどうしようどうしよう……!!
「誰かっ……誰かいませんか!?」
体の破裂を許すくらい大きな声を天に叫んだ。
無駄だ、と一瞬で悟る。
七夕祭りは、この地域では唯一の伝統行事。
みんな今頃、下町の屋台で祭りを楽しみ、短冊を笹にくくって微笑んでるんだ。
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