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「そう、ヨーロッパ。
俺達、元美大生なんだ、こんなちゃらんぽらんでも。
テツとは同じ美大卒業した同級生なんだ」
自慢気に語り、泥のついた人差し指でナオ君が鼻をこすった。
……鼻が黒い。
あたしは咄嗟に、人差し指と中指でナオ君の鼻に触れた。
2、3秒。
彼はくすぐったそうに目を瞑った後、照れたのか眉を下げて笑った。
ナオ君の笑顔は、見てて幸せな気持ちになる。
「ありがと。でもルコちゃんの指元からどろどろだったから、俺パンダみたいだ」
「……くすっ、パンダ」
目の前のナオ君は鼻がさっきより黒くて、確かにパンダみたい。
「やっと見つけた」
「え?」
「ルコちゃんの笑顔。俺やっと見つけられたー」
腕を伸ばし、歯を見せて笑う、パンダのナオ君。
「………」
そっか。
ナオ君の前で笑ったのは今が初めてかも。
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