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車から降りたナオ君は、あたし側の扉をスライドさせ、あたしの腕を引っ張った。
初夏の夜。
あたしは細くて固い腕とセットの手に促されるまま、車の後ろに隠れた。
「車から降りて、後ろに隠れとくんだ。
で、後ろのナンバープレートのとこに隠れて、ワッと脅かしてやろう?」
いたずらっ子の口調に、あたしの眉が下がる。
不思議と、ストーカーのことやそれに基づく不安や悲しみ等が薄らいでいた。
ナオ君と話してると、過去も未来も忘れて、自然と笑顔になれる。
ナオ君パワーだね。
埋める作業を終えたからっていうのもある。
辛い出来事を一時でも一瞬でも紛らわそうという、あたしの現実逃避もあり、
「うん」
と、力強く首を振った。
「あ」
数メートル先のコンビニの入口から、白い半袖Tシャツ姿のテツローさんが出てくるのが見えた。
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