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ブゥンブゥン。
「え」
あたしとナオ君の地声が重なった。
背中側に止まっていた黒いワゴン車、
つまりあたし達がさっきまで乗っていた車が、エンジン音を吹いていた。
「……」
ポカーンと口を開け、隠れたままのあたし達をせせら笑うように、車はUターンし、道路に向かっていった。
「あいつ最悪だ!!俺達を乗せてかないつもりだ!!」
「嘘!?置いてかれちゃうの!?」
「テツのくそ野郎!!おーい!!止まれえーっ!!」
「テツローさーん!!待ってー!!」
SOSする時こんな感じなのかな、ってくらい2人で腕をブンブン振った。
しばらくし、車は再びUターンし、先程と同じ場所に停車した。
大急ぎであたしとナオ君はドアを開ける。
運転席にはタバコをくわえ、冷たい睨みをかますテツローさんが座っていた。
「……テツが遠慮しない人間だって、忘れてたてへ」
ペロッとナオ君が出した直後、テツローさんの片足がナオ君の足にめり込んだ。
「悪いな。アクセルと間違えた」
冷徹の表情でテツローさんは足を抱えて涙ぐむナオ君に言った。
よ……容赦ない。
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