天の川

8/68

1687人が本棚に入れています
本棚に追加
/338ページ
少しずつ少しずつ、確実に あたしと男の距離は、縮まっていく。 焦れったいくらいに。 ガッ。 浴衣に足をとられ、あたしは細い一本道に倒れ込んだ。 細過ぎて車も通らない。 鼻緒を引っ掻けていた指の股は、真っ赤に擦りむけている。 青白く不気味な電灯がしゃがみこんだあたしと、近づいてくる男を無感情に照らす。 「……はっ…」 携帯電話は電池が切れてて使えない。 Tシャツにジーンズというラフな出で立ちの男が、包丁を両手に、にやりと口の端を上げた。 絶体絶命というどん底に沈んだあたしは、カタカタと奥歯を鳴らしていた。
/338ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1687人が本棚に入れています
本棚に追加