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少しずつ少しずつ、確実に
あたしと男の距離は、縮まっていく。
焦れったいくらいに。
ガッ。
浴衣に足をとられ、あたしは細い一本道に倒れ込んだ。
細過ぎて車も通らない。
鼻緒を引っ掻けていた指の股は、真っ赤に擦りむけている。
青白く不気味な電灯がしゃがみこんだあたしと、近づいてくる男を無感情に照らす。
「……はっ…」
携帯電話は電池が切れてて使えない。
Tシャツにジーンズというラフな出で立ちの男が、包丁を両手に、にやりと口の端を上げた。
絶体絶命というどん底に沈んだあたしは、カタカタと奥歯を鳴らしていた。
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