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一応あたしも乙女だから、綺麗と言われるのを期待した。
彼はハンドミラーをいじくり、そこにあたしを映した。
左半分にテツローさんの左目が映っていて、それは三日月形に細まっていた。
「人殺した女を撮るなんざ、二度とない機会だ」
それは、照れ隠しじゃない、好奇心の目。
ああ、この人は、
ちょっと曲がってる
と、彼の纏う空気から感じた。
今は、テツローさんを失礼な人だとも思わなかった。
反抗する気力も、理由もないから。
「じゃあ……次の信号待ちの時撮っていいよ」
あたしの中のプライドがどんどん溶けていて、もう一握りも残ってない。
テツローさんもナオ君も、あたしの命の恩人。
罪人に命の恩人を拒む意思も権限も、皆無。
写真くらいどうだっていい。
どんな理由であれ、彼があたしを撮りたいと言うのだから。
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