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「行くぞ、香織」
香織は機械のように立ち上がった。巻きかけていた包帯が垂れ下がる。
「香織...!」
その腕をつかんだが即座に振り払われた。
俺はため息をついた。
「わかりました。彼女を帰します。けれど彼女の怪我の手当てがすんでから、です。それくらいいいでしょう?」
「ま、許してやるよ」
クソムカつく男に許可をもらう。
すると彼女はおとなしく再び席につく。マジムカツクアノオトコ。
「その女のどこが気に入ったんだい?」
甲斐甲斐しく彼女の手当てをする俺に男が聞いた。
「好きになるのに理由が必要ですか?」
「あ?」
「俺は必要ないと思いますよ。仮にあったとしてもあなたには言いません。彼女への口説き文句にするので」
「うへぇ...異国の人間は恥というものを知らんのか」
「日本人はもっと積極的になるべきかと」
「お前もひどい男に見初められたものだな」
「さあ、できた。」
彼女の着物を着つける。女中さんに習ったかいがあった!なかなか綺麗にできたと自画自賛。
「あ、待って。仕上げ」
頬に軽くキスする。
男がうげーと顔を背けたが知るものか。
香織は相変わらず、無表情。
でも俺は構わなかった。にこにこ笑ってその日は彼女を見送った。 その日は。
恋する男子は強いのだ。
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