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パシィーーン!!
心地よい音が響いた。
驚いた。驚いたあとに左頬がじんじんと痛かった。
「ぁ...」
微かな声が聞こえた。
俺は倒れるくらい強い力でほおを張られてしまった。
誰に?
彼女に。
彼女はとても驚いた顔をしていた。俺以上に驚いた顔だった。ショックを受けていると言ってもいい。
「ふふ...あはははは!」
いえ、俺はけしてマゾではないのだが。
立ち上がる。
「君にも感情はちゃんとあるようだね。そうだよ、ないはずがないんだ」
「...!」
「それでいいんだよ。嫌なら今みたいにスパーンと叩いてくれればいい、ね?」
彼女はまだ驚いた顔をしていた。
「本当は今日、これを渡そうと思っていた」
鞄から箱を取り出す。上品な創りになっている箱だ。開けて見せる。
中には金色の指輪が入っていた。
「エンゲージリング。結婚指輪だよ。僕らの国では永遠を誓った恋人へ送るんだ。でも」
「君はまだ僕が嫌いなんだね。いいよ、それで。それでいいんだ。」
抱き寄せる。これぐらいは許してもらおう。俺はこりない男なんで。
「だからこれはまだ渡さない。」
「君が俺のこと好きって言ってくれたときに改めて渡そう」
愛の言葉のかわりに俺はそう囁いた。
彼女はまだ驚いていた。
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