おんぶ

4/8
前へ
/8ページ
次へ
近くにいた野次馬の一人に、A君は声をかけた。 「男性が轢かれる瞬間を見ました?」 声をかけられた男は、俯いて小さな声で答える。 「ええ」 A君は続けて尋ねた。 「その男性がおんぶしていた老人はどこへいったんでしょうね」 すると、男は眉間にしわを寄せて言った。 「あんた、何言ってんの?気持ち悪いこと言わないでくれよ。男性は『一人』で歩いていただろ」 その言葉を聞いて、A君は全身が震えた。 自分が見たものは何だったのだろう。頭の中を駆け巡る考えを打ち消すように、A君は自分の『見間違い』だと必死で思うようにした。 その時、A君の肩を誰かが叩いた。 A君は飛び跳ねるように振り向く。そこにはB君が立っていた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加