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近くにいた野次馬の一人に、A君は声をかけた。
「男性が轢かれる瞬間を見ました?」
声をかけられた男は、俯いて小さな声で答える。
「ええ」
A君は続けて尋ねた。
「その男性がおんぶしていた老人はどこへいったんでしょうね」
すると、男は眉間にしわを寄せて言った。
「あんた、何言ってんの?気持ち悪いこと言わないでくれよ。男性は『一人』で歩いていただろ」
その言葉を聞いて、A君は全身が震えた。
自分が見たものは何だったのだろう。頭の中を駆け巡る考えを打ち消すように、A君は自分の『見間違い』だと必死で思うようにした。
その時、A君の肩を誰かが叩いた。
A君は飛び跳ねるように振り向く。そこにはB君が立っていた。
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