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「3年ぶりか~。」
引越し用ダンボールに入っていた自分の服やらの片付けを済ませた後、背伸びをして三年間使っていなかったこの家のベッドに飛び込んだ。
この三年間、親の仕事の事情で都会でアパート暮らしだったのだが、次の仕事はしばらく海外に滞在することになるというので、俺、【桐原 勇二(きりはら ゆうじ)】はこの町に戻って来た。
なぜ都会じゃなくてこの町なのかというと、まぁ単純に好みである。
都会は息苦しくて忙しない。俺はこの都会まではいかなくてもまぁまぁ賑わってて、田舎まではないがそこそこ自然があるこんな町が好きだった。それだけ。うん。別に好きな子がいたとかではないぞ?
都会のアパートの方から食器やらテレビやらの荷物が届くまでの数日間は学校の狭い寮を使っていたがそれも今日で終わりだ。
両親はそのまま海外に行ったので、この家には一人。わかる人にはわかるこの自由になった感覚とすごい高揚感。
まぁ親は都会にいる時も仕事でほぼいなかったし、その頃とあまり変わらないのだが……。それに、俺はもう高校一年生だ。一人暮らしの能力くらいは身につけている。
「後はこれをどっかにしまうか飾るかすれば終了だな。」
ベッドから上半身を起こし、部屋にゴタゴタと置かれている段ボールを見てから、よし! 気合を入れる。
その段ボール達は引越し用ダンボールとは違い、親が海外から送ってきたお土産が入っている物で、俺から言わせればガラクタばかりに見える。
「…こんな鳥の羽が付いた帽子って何に使ってんだよ…。」
時計は12時を少し過ぎたくらいだ。余裕で今日中に片付けれるだろう。
最初に手に取った段ボールをさくさくと片付け終わり、ダンボールを分解すると次の新しい段ボールを開く。
「ん?……」
それを見た瞬間に、俺の頭には?マークか浮かんだ。
なぜなら、最初の段ボールのようなゴチャゴチャしたのとは違い、これには茶色に変色した古臭い巻物の様な物だけがポツンと一つ入っていただけだからだ。
「なんでこれ一つだけなんだ?……怪し。」
とは言いつつも、好奇心にかられ、段ボール箱からその巻物の様な物を取り出す。
その紙は乾燥しているのかカサカサな干からびた紙で、すぐに破けてしまいそうだった。
その紙をゆっくりと丁寧に広げていく。
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