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その少女はシャワーを浴びていた時に一瞬だけ見えた和やかな表情とは一変し、怒りを露わにした表情になっている。
(……思い出した……こいつに蹴られて気を失ったんだ……)
肩をワナワナと身体を震わせる少女を見て、先ほどの蹴りが出てくるのではと思い、愛想笑いしながらもゆっくりと後ずさる。
「お前は……!?…くっ!……うぁ!うぅ…。」
だが、その今にも怒り出しそうだった少女は急に頭を抑えて苦しそうな声を漏らす。
……俺の真なる力が目覚めたワケでもなさそうだ。
「ぐ…ぐぅ!」
少女は痛みが消えないのか、苦しむ声は一層強くなる。
そして、いきなり彼女のピンク色に近いその淡い朱色の髪が、突然真っ赤な朱色に変化して神々しく輝き出し、頭から黒い小さな角が生え出した。
(ツノぉ!?…嘘っ!?…って、そういやさっき、こいつが現れた時も魔王がなんちゃらって……)
「おい、大丈夫か!?……と、とりあえずこれ!」
いきなりの事態で何も出来ずただ立ち尽くしていた俺は、なんとか身体を動かし、洗濯したばっかりの大きめのバスタオルを取り、彼女に渡そうと手を伸ばす。多分、身体を隠すようにタオルの渡すのは、本気で苦しんでる少女にするべき対処法ではないかもしれないが、何がどうか理解できてない俺はそれくらいしかできなかった。
しかし、彼女はもはや何も聞こえていないらしく、バスタオルを受け取ろうとはしない。
(……なんだ?何が起こってるんだ?)
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