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「ヴぅぅぅぅぅぅぅ」
(怖ぇよ……なんかコエェ…なんだこいつ…角とか本当に魔王…なのか?…とりあえずタオルだけでも渡して気を収めてもらわないと……。)
彼女の長い髪はなおも炎のように輝き、頭の角は最初より大きくなり禍々しいオーラを放っていた。
俺の頭はそれはそれはパニック状態で回っていて、どうにか裸を隠すようにとしか働かず、俺はタオルを受けとらないならと、風呂場のドアを閉めようと前に踏み出す。
が、次の瞬間、前に踏み出した足が何かを踏んで勇二は勢い良く前に足を滑らす。
……。俺は、風呂場のドアを開けっ放しでシャワーを浴びていたから、水が洗面所に流れているのには疑問はいかなかった。
そのためだろう。足元にまさか【石鹸】が流れてきてるとは思ってもいなかった。
バランスを失い、さらにシャワーの水で濡れた洗面所を滑り前に倒れる。
そして、そこにいるのは当然、……唸りをあげている少女だった。
「ちょっ!……やばっ、ぶつかっ………」
だが最早、俺は勢いを止められず、その少女にぶつかり一緒に前に倒れる。
「……っ!?」
俺は口に……いや、身体全体に感じ違和感に目を大きく見開く。
口に感じる、マシュマロの様な柔らかなフニッとした感触……。今、俺の身体は少女に抱きつく様に倒れこみ……少女の口が俺の口に重なっていた。重なってしまっていた。
「!!!!」
(ヤバイ!!…ふつーにヤバイ!この状況はマジで殺される!)
そう察知し、その少女の唇から顔を急いで離そうとする。
…………が、離せなかった。
離したくないのではなく、離せない。身体が上手く動かない。動こうと力を入れるがそれが何処かへ拡散されているような感覚……。
押し倒されたその少女の髪は赤く煌めき続けているが、さっき見た時は輝いていた紅い目は曇り、まったく少女からの抵抗を感じない。……いや……生気をまったくというほど感じなかったのだ。
(?…どうなってるんだ?……)
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