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白い手が入り口にぬっと現れて扉の縁をつかんだ。
「わるい子、わるい子だあれだ?」
おじさんとわかる声、でも少し高めの声。
「ゾウさん壊したのだあれだ」
節をつけて歌うように声は続けた。
「公園汚したのだあれだ」
声の主が扉から出てきた。
かなり小柄なおじさんだった。
子どもより少し大きいぐらいの背丈。
しかし横幅は異常な程太い。
まん丸に近い程だ。
はじけんばかりの体は白いシャツにサスペンダー付きの黒いパンツに包まれて揺れている。
頭にはくたびれたハンチング帽をかぶっている。
白い丸顔、ぎょろりとした目。つぶれたような鼻。どれもが不自然に歪んで見える。
だが一番目を引くのは冗談みたいにでかい口だ。
耳まで裂けているみたいに、三日月型に伸びている。
その口がニタァと笑った。
…人間じゃない。咄嗟にそう浮かんだ。
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