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「わるい子だあれだ」
声の主が再び言った。
「何だ、あれ」
黒田のその声を聞いたとき、幹介は自分が呆然としていたことに気づいた。
心臓がきゅうっと小さくなった。息がしづらい。
やばい。やばい。
ただただ、自分の本能があいつは危険だと叫んでいた。
「ゾウさん壊したのは君かな?」
いつの間にか流れ出していた赤黒い液体が幹介たちの足元まで来ていた。
男はその上を歩いてくる。
まるでレッドカーペットの上みたいに、ゆったりと。
赤黒い液体の上に足を下ろす度にビチャっと少し粘度のある音がした。
すると、
「君かな、君かな、君かな」
そいつが目の前にいた。幹介の目を下から見上げている。
男の息がかかった。
幹介は悲鳴を上げた。
いや上げられなかった。ひっと息をのんだだけで終わってしまった。
息をのみながら、必死で首を振った。
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