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幹介は叫んで後ずさりした。
黒田も田辺に駆け寄ることなんてできず、ただ田辺を見ているだけだ。
「ゾウさん、ゾウさん、お鼻がもらえてよかったね」
男はいつの間にかすべり台の一番上に立ちくるくると回っている。
幹介がはっとしてゾウの遊具を見ると、
「は、鼻…?」
ゾウの鼻は依然として地面に落ちている。じゃあ一体…?
ゾウの鼻があるべき場所には、粘土細工で無理やりひっつけたみたいに、ちぐはぐな人間の鼻がついていた。
ひっと黒田が息をのんで、わなわなと震え出す。
そして大声を上げながら一直線に公園の出口に走り出した。
黒田、そんな、待ってくれオレも、と思いながらも幹介の体は動かない。
「君もうそつき?」
男が黒田の方にくるりと体を向けた。
動揺した黒田は砂場を横切って近道しようとしたが、子どもが作った砂山を蹴って足を取られる。よろめいた黒田の体が、がくんと沈んだ。
「砂場は仲良く使いましょう」
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