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幹介のすぐ後ろで声がした。
目の前のすべり台にはもう誰もいない。幹介は泣きながら震えていた。
「昔からよく来てたよね」
「お父さんと一緒だった」
幹介はただ頷いた。
「君、とってもいい子だった」
「だから痛いこと、しない」
幹介はおそるおそる肩越しに振り返って尋ねた。
「あんた、…何者?」
男のぎょろりとした目が光る。
「わたしは、串の町4丁目、たんとう」
「そ、そっか」
勇気を振り絞って男に向き合う。太っているが小柄なおじさんは下からじいっと幹介を見つめている。
「君、いい子」
「うん」
幹介は後ろに下がった。
男の口元がぴくりと動く。
「だから」
そしてニタア、と笑った。
「宝物に入れてあげる」
「は…」
幹介は目を見開いた。
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