串の町4丁目

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だが、田辺は何も言わない。 体を起こした田辺がいつの間にかうずくまっている。 「大丈夫か?」 頭でも打ったんだろうか。 「…無理」 と言うなり、田辺は顔をこちらからそらして吐き出した。 「うわ」 これには幹介もうんざりだ。 帰りたくなってきた。 「気分悪いなら言えよ、うえ」 少しむせた様子の田辺に黒田が言い捨てる。 「水…」 公園には小さな水道があったが、水をちゃんと買ってきてあげた方がいいだろう。 「オレが買って、」 買ってくるよ、と言うつもりだった。 落ち着いたら帰ろうぜ、とも。 そのときふと幹介の後ろから風が吹いた。 風が吹いたんだと思った。 やけに冷たくて、確かにひゅうっと音がした。 だけど実際それは風でも何でもない、扉が静かに開いた音だった。
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