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妙な気配に幹介は咄嗟に振り返って、黒田や田辺も視線を向けた。
「なんだ?扉なんかあったのか?」
黒田は話しかけて、ふいに黙る。
数メートル先のすべり台に小さな穴が空いていた。扉が開いているのだ。
ぽっかりと空いた穴の中は周りの暗闇よりも一層真っ暗で不安な気持ちにさせられる。
「風で開いた…?」
普通に考えれば近所の人が騒ぐオレたちに一言文句を言いにきたのだろう。
こんなに緊張することでもないはず…。
そのときぽっかり空いた暗闇の端から何かが滑り出てきた。
最初は目の錯覚かと思った。
暗闇がこっちに伸びてくるように見えたから。
だけど確かにそれはこちらに近づいている。
反射で何なのか確かめようと目をこらして、一瞬、それが黒い長い髪の毛に見えて縮みあがった。
しかし、違う、液体だ。
暗くて色ははっきりしないが、赤黒い液体がこちらに流れてくる。
「う、わ」
田辺が明らかに上擦った声をあげた。
そのとき。
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