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―――――……
それから数年。私は毎年この場所にくるようにしている。
彼が亡くなった場所――そこに花束を届けに。
そして、今日は一つの本を持ってきた。
それを花と一緒にそっと地面に置く。
「一徒くん…これ、私が書いたんだよ。
一徒くんならもっと早くこんな研究してたんだろうけど、私は8年もかかっちゃった…」
高校を卒業してからずっと追いかけている。
そう――私の夢を。
それは彼のことを想い続けているからではない。
高校生の時の私の頑張りに…報いてあげたいからだった。
「里奈、いつまでやってるんだそろそろ行くぞー」
「うーん、分かってるー♪」
今は結婚して名前も変わっている。
収入は多いとは言えないけれど、暮らしに不自由はない。
毎日笑って過ごせているんだ。
私は手を合わせてもう一度冥福を祈り、その場を後にする。
彼がいたから今の私がある。
彼は居なくなったけれど、私はもう悲しくなんてない。
幸せなんて人それぞれだから。
私は―――彼のいない場所で幸せになったから。
でも、それはほかならぬ彼のおかげだった。
彼の言葉が私の人生を変えてくれた。
導いてくれた。
だから、改めてお礼を言いたい。
振り返り、今は亡き人に気持ちをこめて。
ありがとう一徒くん――
私は今、とても幸せだよ。
【浅瀬里奈 Happy End Route】
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