-ジャンプルート 浅瀬里奈-

16/16
253人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
―――――…… それから数年。私は毎年この場所にくるようにしている。 彼が亡くなった場所――そこに花束を届けに。 そして、今日は一つの本を持ってきた。 それを花と一緒にそっと地面に置く。 「一徒くん…これ、私が書いたんだよ。 一徒くんならもっと早くこんな研究してたんだろうけど、私は8年もかかっちゃった…」 高校を卒業してからずっと追いかけている。 そう――私の夢を。 それは彼のことを想い続けているからではない。 高校生の時の私の頑張りに…報いてあげたいからだった。 「里奈、いつまでやってるんだそろそろ行くぞー」 「うーん、分かってるー♪」 今は結婚して名前も変わっている。 収入は多いとは言えないけれど、暮らしに不自由はない。 毎日笑って過ごせているんだ。 私は手を合わせてもう一度冥福を祈り、その場を後にする。 彼がいたから今の私がある。 彼は居なくなったけれど、私はもう悲しくなんてない。 幸せなんて人それぞれだから。 私は―――彼のいない場所で幸せになったから。 でも、それはほかならぬ彼のおかげだった。 彼の言葉が私の人生を変えてくれた。 導いてくれた。 だから、改めてお礼を言いたい。 振り返り、今は亡き人に気持ちをこめて。 ありがとう一徒くん―― 私は今、とても幸せだよ。 【浅瀬里奈 Happy End Route】image=468012898.jpg
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!