0人が本棚に入れています
本棚に追加
1
「おぉ…どうか法師様、私どもの願いを叶えてくれませぬか…」
まるで神頼みでもするかの如く、只ひたすらに願い続けられる気持ちが分かるだろうか。これも只ひたすら人間である自分に神の如く願い乞われるのである。
さながら神の気持ちの実感出来ると思いきや、神の気持ちなど人間である限り分かるはずがない。
「どうか…どうか願いを聞き入れたまえ~」
文頭のセリフとこのセリフのループがかれこれ二時間。もう頭の中ではゲシュタルト崩壊と悟りを開く勢いである。
「あのですね~…これも先程から何回も言ってる事なんですけど私は法師じゃなくて魔法師です。その証拠に坊主じゃないでしょ?」
祈祷する老人を先頭に村人全員から崇められている青年が力なく声を出す。
確かにその青年の頭は坊主ではなかった。むしろ好き勝手に伸び放題の黒髪のボサボサした長髪だ。前髪も長く遠目からでは俯く彼の表情が読み取れない。だが目元が見えにくい変わりに鼻眼鏡がこっそりと覗かせているのが特徴的だった。
最初のコメントを投稿しよう!