一章 魔法師と化石少女

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 何故か自分の事を頑なに神職の者にしようとする村人達。どこか切羽詰った様子なのは先程から伝わってくる。  何か事情がありそうな気を感じたフーりであったが、とりあえずこの食い違いをなんとかせねば延々と今までのやり取りを繰り返す事になる。  ――そうです!  彼はとっておきの解決策を思いつき思わずニヤける。それはもう自分の特技を使う場面に巡り合えたのだから。  「皆さん!聞いて下さい!」  今までとは違う、講義ではなく何か自信に満ちた声に村人達が再度見上げ耳を傾けてきた。  「神は出せませんが、魔法や魔術には興味ありませんか?」  不敵な表情を浮かべて問いてくる目前の青年。村人達は皆困惑する。魔法、魔術などおとぎ話のような話をいきなり切り出されても現実的に考えて信じられない事だ。そんな事よりも早く神の力で自分達の願いを叶えて欲しいという願望に苛立ちを感じる。  青年―フーリは話を続ける。  「魔法、魔術は信じられないですか?いえいえ、実際【魔の力】とは誰でも使える代物なのですよ?”それは皆さんの心の力”などとおとぎ話のようなニュアンスではなく、【人】である限りちょっとした難しい知識があれば使用可能なのです」  喜々として説く青年はまるで小さい子供がはしゃぐかの様に無邪気な笑顔を浮かべている。  「あなた方が盲信している神に近しい力だって人間である私達自身で使えるのですよ?科学や機械と同様…「魔の力」は人が歴史の中で生み出してきた産物の一つ。魔法・魔術は人の叡智の結晶!知識の塊!」  「皆さんは実に運が良いです。なんたって…この天下の魔法師の技術をご覧になれるのですから」  一方的に喋りあげたフーリはおもむろに手を掲げる。  「そう今から皆さんに披露するのは魔法の一種。神にも匹敵する人間の知識をご覧に入れましょう!」  ゴゥ…!!  突如、前触れもなくフーリが掲げた右手が燃え上がる。  いきなりの人体発火に当然村人達は声を上がり、空気が変化する。  「赤の一番でいきましょうか」
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