おなかまなあなたさま。

10/40
前へ
/40ページ
次へ
私は言われた通りに立って、救い屋さんに近付いた。 救い屋さんと私、並んで屋上の柵に手をかけて、段々と赤く染まってゆく空をぼんやり眺めた。 しばらくの間そうしていると、 隣にいるのは、あの都市伝説の救い屋さんなどではなく、私のことを大切に思ってくれている、一番の友人の様に思われた。 いつの間にか私は自分の心の内を、全て話してしまっていた。 中学の時のこと、 アイツのこと、 罪悪感がない自分が怖いこと、 高校に入ってからのこと、 いつの間に腹黒くなっていたのか自分でも分からないこと、 ――腹黒さなんて捨てられるのなら捨ててしまいたい、こと。 私は夢中で喋り続けた。 あらかた話終えると、 もうすっかり辺りは暗くなってしまっていた。 濃紺の空に明るい灰色の雲がキレイだった。 もう帰らなきゃ、と口走りそうになった時、 「――つまり、綺麗なお腹が欲しいんだね?」 救い屋さんが口を薄く開いて、囁くように言った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加