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私は言われた通りに立って、救い屋さんに近付いた。
救い屋さんと私、並んで屋上の柵に手をかけて、段々と赤く染まってゆく空をぼんやり眺めた。
しばらくの間そうしていると、
隣にいるのは、あの都市伝説の救い屋さんなどではなく、私のことを大切に思ってくれている、一番の友人の様に思われた。
いつの間にか私は自分の心の内を、全て話してしまっていた。
中学の時のこと、
アイツのこと、
罪悪感がない自分が怖いこと、
高校に入ってからのこと、
いつの間に腹黒くなっていたのか自分でも分からないこと、
――腹黒さなんて捨てられるのなら捨ててしまいたい、こと。
私は夢中で喋り続けた。
あらかた話終えると、
もうすっかり辺りは暗くなってしまっていた。
濃紺の空に明るい灰色の雲がキレイだった。
もう帰らなきゃ、と口走りそうになった時、
「――つまり、綺麗なお腹が欲しいんだね?」
救い屋さんが口を薄く開いて、囁くように言った。
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