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一瞬だった。
救い屋さんが私の目を左手で隠し、右腕で私の身体を引き寄せ、私の唇を塞いだ。
「・・・っあ・・・ん、ぐ・・・・・・?!」
「飲み下して。全部。」
何かが、私の口の中に吐き出される。
私の舌に、釣り針の様な何かが引っ掛かっては、必死に飲み込む私の腹の方へ引きずり落とされてゆく。
滑らかで、しかし時に鋭いトゲがあり、時に長く、大きく、時に細かすぎてざらざらしているもの。
味は分からない。
気持ちが悪い。
私は、何を食べているの?
「・・・っかは・・・・ぐ、んんん・・・・・・・・・・はあ、あっ」
「お疲れ様。よく頑張ったね。」
救い屋さんの労る優しい声で、私の身体と、私が飲み込んだモノのとの間で起きていた、反発の様なものが、すうっと薄れていく様な気がした。
「・・・・っはあ、はあ、はあ、はあっ・・・・・・・・」
息を落ち着かせ、救い屋さんの方に顔をゆっくりと上げた。
救い屋さんは、微笑んでいた。
「大切にしてあげてね、彼らはキミがお腹を提供してくれる代わりに、キミの望みを叶えてくれる。
腹を割って話せるようにしてくれるし、
腹の底から笑えるようにしてくれる。
もちろんキミのお腹を綺麗にしてくれる。
これから約一月の間、彼らをよろしく頼むよ。」
私は辛うじて頷いた。
そして、瞬きをしたその間に、
救い屋さんは消えた。
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