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「はぁ…」
黒い男が卓袱台の上に置かれた紙の束、およそ家計簿と思われる手帳とにらめっこしている。
最終的に漏れたのは笑みではなくため息であったが。
「今月はなんとか黒字…、だが…」
この店は立地条件が悪いわりにはそこそこ繁盛しているらしい。
人生相談所が繁盛している、というのは、悩みを持つ人がそれほど多いと言うことなのだろうから、喜ばしいかどうかで聞かれればいささか疑問には思うところではある。
ともかく、先月まで赤字だった収入を黒に持っていけたのは良いことである。
この男もそこについては重々承知しているし、ようやく黒字になった安堵もある、がしかし、
「多少…、いやかなり割に合わんな」
そう、労働量と比べれば明らかに収入が少ないのである。
とある依頼以来人里の外にもパイプを伸ばし、紅魔館との繋がりを持ち、そこで働くメイド妖精が現在の主な顧客となっている。
しかし、相談料を客に任せているというのもあるが、一人あたりの払う金額が微々たるものなのだ。
「まったく、あいつらは一体何を考えてるんだ、というより、何か考えているのか?
毎日飽きもせずグチグチと上司の不満をぶちまけて、そのまま勝手に納得して帰るだけ。
その上司もたまに来ては部下の態度とか働きぶりをとやかく言って満足して帰るだけ。
そして大したことじゃないと自分達でも認識しているのか、いつだって払う金額は雀の涙だ、これじゃ身がもたん」
彼女たちにとってはおよそ喫茶店にでもいく感覚なのだろう。
事実、一度複数人で来てガールズトークに花を咲かせた連中もいた。
さすがにその時はサカエダが店から摘まみ出していた。。
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