君に話しかけたくて、待ち伏せた。

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「チョコレートのお礼がしたいの」 そう言ったら、彼はじっと、私の顔を見つめた。 「ああ。今朝の貧血のおねえさん」 思い出したのか、彼が耳からイヤホンを外した。 「へえ。俺のこと、待っててくれたんだ。貧血治ったの?」 「おかげさまで」 「お礼なんて別にいいのに」 「口実よ。一緒にご飯でもどう?」 そう言ったら、彼は一瞬驚いたように目を見開いて、それから、静かに笑った。 「……いいよ」 ああ、この笑顔だ。 この笑顔をもう一度見てみたくて、あたしは彼を待ち伏せた。
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