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「……で?」
座敷に向かい合って座る彼が眉間にしわを寄せた。
「すっぽん……?」
「そう。すっぽん」
制服の上着を脱いで白いシャツとグレーのセーター姿になった彼は、困ったようにテーブルの上を眺めている。
テーブルの上には、蓋の閉まった土鍋。
居酒屋風のお店の奥の座敷に向かい合って座って、私はにっこりと微笑んだ。
「ファーストフードのハンバーガーで良かったのに。俺、すっぽんなんか食った事ねえよ」
そう言って、土鍋の蓋を手に取った。
「うっわ!亀!亀だよねえさん!甲羅そのまま入ってる!」
「当たり前でしょ。すっぽんだもん」
思った通りの反応に、私はニヤニヤしてしまった。
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