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頭上の声で世界に引き戻されて、私はゆっくりと頭を上げた。
一番はじめに目に入ったのは、ナイキのスニーカー。
ゆっくりと、視線を上げる。
無表情に私を見下ろしていたのは、紺地に黒いパイピングの入った学生服を着た男の子。
「……ただの、貧血だから」
「ふうん。……じゃあ、さ」
見上げた目の前に、差し出された小さな紙袋。
誰もが知っている、高級チョコレートのお店の名前が印刷されている。
「血糖値上げればマシになるかもよ」
静かに、笑った。
その笑顔の後ろに、泣きそうな顔をした制服姿の女の子が立っていた。
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