こげ茶色の髪の女

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 男の足は震えだしていたが、勇気を振り絞ると、恐る恐る部屋の中へと入っていった。  忍び足で部屋の中を回る。  床に散らばっているものや棚の中などを探索し、何を取られたのかを確認していく。  まず最初に気付いたことは、印鑑がない。  印鑑が、通帳と共になくなっていた。  そして包丁もなくなっていた。  男はさらに用心した。  慎重に、他に盗まれたものはないか確認する。  だが、他に盗られたというものは、特に見つけることはできなかった。  まぁ当然だろう。と、男は気を少し緩めた。  ここの家は一応一軒家だが、住んでいるのはこの男ただ一人だけなのだ。  また、出張などもたびたびあったので、男の家には金目のものは印鑑と通帳ぐらいしかなかったのである。
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