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だがしかし、それを知らない空き巣の犯人が、他の部屋も荒らしているかもしれない。
いや、もしかしたら、まだどこかの部屋に隠れているのかもしれない。
そうなったら、背後から襲われる可能性があった。
男はそう思うと、リビングの、人が隠れられそうなところを確認する。
けれどもそこに人がいる様子はない。
他の部屋も確認してみよう、と男はリビングを抜き足差し足で出て行った。
実は男は空手4段だった。
なので、正面から空き巣と向き合えば、自分が必ず捕まえることが出来る、と男は思っていたのだ。
玄関に戻り、そこからキッチン、寝室、和室、物置、風呂場まで、男は音をたてぬよう慎重に回り、人が隠れられそうなところを徹底的にに調べた。
だがそこにもやはり、人がいる気配はない。
そういえば……と、男はあることを思い出した。
近所のおばちゃんから聞いた話なので、適当に聞き流していたが、この辺りには最近、不審人物が出るようなのだ。
なんでも、キョロキョロとせわしなく首を動かしながら、辺りを見回し、たまに微笑みながら道を歩いているらしい。
確か噂によると、長いこげ茶色の髪で白いワンピースを着た女だったはずだ。
また、この辺りで空き巣の被害も少なからずあった。
ここ最近での空き巣事件は、この家から徒歩20分ほどの所にある、たしか……藍河という人のお宅だった。
しかし藍河さんとは面識がなかったので、詳しいことは何も知らない。
結局、こげ茶色の髪の女と空き巣、どれほどよく考えても、どちらに関係するのか、よくわからなかった。
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