久坂玄瑞

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『士農工商など、そのような制度は要らないので すよ。誰もが平等、それが簡潔明瞭であり、それ が私の望む世なんです』 『壮大ですね』 今よりも遥か昔から、言葉と意味は違えども、士 農工商という身分制度は外から持ち込まれて広め られていきました。 広められたそれはいつの間にか深くまで根付いて しまい、いつの間にか……当然のものとなっていま す。 松陰先生の望む世は、その当然を壊して覆して、 作られる新たな世。 僕のような若造からしたらそのような語りはまる で夢事で、なんとも壮大で無謀だといえますが。 それでも、この人ならば、なんて……そのように思 わせる何かが、松陰先生にはあります。 逸脱したこの人だから、沢山の人が集い慕うので しょう。 尊敬し、自分もまたこのように在りたいと強く…… 惹かれるのでしょう。 『義助はどんな世にしたいですか?』 塾生には、尊皇攘夷の志を持つよう教えの合間合 間に語りはするけれど、だからといって、一人一 人が何をしろとはの強要はしないこの人だから。 だから僕は…… 『ここみたいな場所を作りたいです』 きっと、屈託の無い笑顔でそう……答えたとだと思 います。 松陰先生はそれを聞くと笑みを深めてゆっくりと 頷いて見せてきました。 『義助なら、きっと作れますよ。絶対に』 松陰先生。 貴方は、それをどのような気持ちで言ったのです か? そして、今の僕をどこかからか、見ていますか? 僕は……。  
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