久坂玄瑞

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共に生きる。 共に在る。 生と死と形は違えど、中身は同じ。 そう思えば、穏やかを満ちさせて逝ってしまった者達の気持ちが切ない程に……分かる。 ……ねえ。直ちゃん。 切腹を嫌ってはいましたが、目を瞑れば僕は誰かのどこのどの場所にもきっと居るのですよね? 文だけでなく、九一君や晋作君。 そして……直ちゃんの前にも。 直ちゃんは……ほら。今僕の目の前に、相変わらずの屈託のない笑みを浮かべて、立っていますよ? その笑顔を……何処か違う場所で、皆を感じながら生きてくれていますよね? 誰よりも生にしがみつくのを望む子だったから……。 常に側にいたから……。 不思議な子、でした。 纏う雰囲気はこの世に生きる誰のものとも異なり、時折不確かな存在かのように揺らぐその雰囲気。 だから、もしかしたら……なんて、ありえない推測をしていたんですよ? でもそのありえない推測を強く信じたいから……信じ貫きますね? 直ちゃんはきっと稔麿君と……共にいるのだと……。 そう、信じますよ? 関わった全ての者の側に居て、稔麿君の側に居て……強く強く思いに残る子ですから。 ……松陰先生。 直ちゃんのような子が、この先には溢れることなのでしょうか? だとしたら……。 ああ……もう、体が酷く、重い……。 傾き倒れてしまっているのが分かる。 残された刻はあまりにも無いものですが、それでも一つだけ……。 口にして、願いたい……。 「ふ、み……。夢を……かっ、なえ……ましょう……ねっ」 語った夢。 同じ夢。 貴女は決して一人じゃありませんから、直ちゃんに続けるようにと……夢を叶えましょうね? この世で唯一愛してる、文。 あの日も今もこの先も、僕の甘い言葉と想いは貴女だけのもの……。 そして魂も……貴女だけに。 魂は共に在り、思いは皆の心に、姿は瞼の裏に……。 ずっとずっと……そこに在り続ける。
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