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「君に、言ってるんだ」
それを聞いて立ち上がった美紗が、何も言わずに黙って図書室を去ってしまうのを、ボクは呆然と見送った。
フォローしてくれないのは、多分、ちゃんと話せってことだ。
1人でやってきて、しっかりボクの目を見て告白してきたこの人が、ただのミーハーではなくマジかガチなんだってことくらいはボクにも分かる。
でもさ。
目の前に立ったまんまの、このふわりと優しい雰囲気を纏う長身の男のことを、ボクは何も知らないし。
なんなら名前すら知らないし。
……多分、向こうだって。
「あの」
口から出た自分の声がやけに大きくて、静かな図書室に響き渡った気がした。
慌てて室内を見渡して、ようやく気付く。
ああ、ボクと生徒会長、2人きりだ。
落ち着け、直。
多分コイツ、勘違いしてるだけだから。
「一昨日、先輩の……元カノさん?が、ボクのとこに来て」
多分、彼女がおかしな誤解をして。
それから、変な噂が立ったから。
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