199人が本棚に入れています
本棚に追加
/384ページ
気が付いたら朝だった。
昨日、座り込んで動けなくなったボクを、生徒会長が黙って学校から連れ出した。
背中を押されるようにして歩いた。
彼が家を知っていたのかボクが案内したのかもよく分からない内に、いつの間にか家に着いていて。
会長は、家に着くまで一言も喋らなかった。
何も聞かなかったし。
何も言わなかった。
無意識のまま習慣的に玄関のドアを開けて中に滑り込もうとする瞬間に、生徒会室の開放について事務的な話をされただけ。
行くかどうかどころか、美紗と純平に話をするかどうかさえボクに委ねられた。
ボクはそのまま自室にこもってベッドにダイブして。
……気が付いたら朝だった。
少女マンガどころか少年漫画の主人公だって、枕を涙で濡らしたり眠れない夜を過ごすんじゃないのか?
良く寝た、を通り越して、寝過ぎて逆にはっきりしない頭を押えながら時間を確認しようと携帯を見る。
アラームの設定時間の5分前だ。
素晴らしい体内時計。
笑える。
腹、減ったな。
晩飯も食わずに寝たから。
……笑える。
洗面所の鏡に映った自分の顔は、いつも通り。
いや、風呂に入ってないからか、いつもより少しだけ寝グセがひどい。
余計、笑える。
熱いシャワーを浴びる。
浴室は冷えていて床が冷たいのに、お湯は熱すぎる。
熱いのか冷たいのか、感覚が麻痺する。
くしゃみが出る。
ああ、寒かったのか。
短すぎる髪は、タオルでガシガシふいただけで乾いた。
用意しかけたドライヤーのスイッチを入れずに、コンセントを抜いた。
なんでこんなに、滑稽なんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!