”好き”という想い

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”好き”という想い

翌日。 この日は、雨が降っていた。 雨が夏で乾いた土を潤し、湿っぽい香りを漂わせている。 トンネルの前で私は傘をさして、雨に打たれながら 待っていた。 それが好きでトンネルの中には入らずにいて、怖いという 思いもあったからだ。 昨日、約束を交わした秀多お兄ちゃんを待っていた。 来てくれるだろうか。 昨日出逢ったばかりで、知らない相手と 約束を交わすなんてたいていの人は、来てくれないはず。 でもなぜだか 秀多お兄ちゃんは、「違う」って言い切れる自信がある。 「おい」 雨の音で足音が分からなかったが 秀多お兄ちゃんが来てくれた。 でもどこか困った表情をしている。 「なんで雨なのに中で待たないんだよ」 「だってこうして秀多お兄ちゃんが迎えに 来てくれるじゃん」 本当は違うけれども こう言えばまた、来てくれるんじゃないかって。 「・・・」 秀多お兄ちゃんはなにも答えなかったけど その後、私達はトンネルの側で 学校でのこと・家族のこと・都会のこと 色々な話しをして 罰ゲームのある遊びをして遊んだ。 ―――私はこうして毎日、叶え山のトンネルで 秀多お兄ちゃんと約束して、待ち合わせた――― いつもの学校の帰り。 私は美心と一緒に帰っていた。 「ねぇ、なっちゃん。」 「ん?」 「どうして毎日トンネルに行くの? 幽霊と友達になったの?」 美心が心配そうな目で聞いてくる。 「あのね。 幽霊じゃなくてお兄ちゃんに会ったの」 それを聞くと美心の目が大きく見開いた。 「えー! 幽霊いたんだー! そのお兄ちゃんのこと好きなのー?」 突然の質問に私はふと、考え込む。 ”好き”かどうかなんて 私には、まだ分からない。 だってまだ小学生だもの。 ”好き”にも色々ある。 恋としての”好き” 友達としての”好き” 可愛いものとかの”好き” それ以上考えると混乱してしまう。 私はその中でも、秀多お兄ちゃんの事を 「うん!大好きだよ」 恋、としての好きという気持ちかまだ、分からなかった。 自然と満面の笑みが溢れる。
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