~秀多~ 突然交わした約束。

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「ここなら絶対にこないな。」 そう思ってトンネルの入口にいたが 慎也の声が徐々に近づいてきていた。 (まずい! 近づいてくる!) とっさの判断で俺は、トンネルの中に入る。 このトンネルの山のことは、じいちゃんによく聞かされていた。 「この街に叶え山っていう、でっけぇ山があるんじゃよ」 「へー。」 俺は興味なくて本を読みながら、頷いているだけ。 「その叶え山の向こう側に小さな 昔の風情が残る地域があるんじゃ」 「ふーん。」 「その地域までを繋いでいるのが ”叶えトンネル”じゃよ」 「ほー。」 じいちゃんは、俺のことを見ずに 窓から見える叶え山を見ながら話しを続ける。 「古くからの言い伝えでな。 そのトンネルで約束を交わすと願いが叶うんじゃと」 「あっそ。」 俺はもう聞き飽きて、じいちゃんの昔話しを捨てるように言い放った。 もちろんじいちゃんは 「これっ! 罰当たりな! ちゃんと人の話しを聞け!」 「いってぇー」 頭にゲンコツを力いっぱいしてきた。 今になって思い出すのは、このトンネルに入ったからなのか。 まぁそんなのは、どうでもいいと思う。 だけど 「このトンネル。今にも崩れそうだな あっちこっちに亀裂が入ってる」 新しいトンネルができたせいなのか 壁に手入れ一つない。 今にも幽霊が出そうで薄気味悪かった。 すると後ろから 「秀多ー?」 慎也の声が聞こえた。 「やっべ!」 慌ててトンネルの奥へ走る。 ビチャ!ビチャッ! 水たまりを勢いよく踏みながら 奥へ奥へと走った。 すると突然。 ドンッ! 「わぁっ!」 「うわっ!」 何かにぶつかった。 「いったぁーぃ・・・」 声からして人だというのは分かる。 「いってーな。誰だよ!」 急いでいたから乱暴に訪ねてしまう。 「わっ! 私、道川 夏香と言います! ぶ、ぶつかってごめんなさい! 幽霊さん!」 よく見ると小学生くらいの女の子。
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