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アマリリス3
もしもし?裕也?…なんだか騒がしいけど何かあったの?」ホームのアナウンスが聞こえたので裕也がまだ駅にいることを悟ったが、それにしてもやけに騒がしい。「うん、ちょっとな。待ち合わせの時間には行けそうもないんだ。また連絡するよ」裕也はそう言って電話を切った。慌ただしい様子が少し心配だったが、リカコはとりあえず家に引き返すことにした。まだ駅のホームにいるってことは短く見積もってもまだ一時間は余裕がある。裕也は遅刻の常習犯だ。どうせ濡れてるんだから!とリカコは開き直って土砂降りの中を歩きだした。
アマリリス4
リカコが雨の中を歩き出してすぐに傘がリカコに差し掛けられた。「これ、使ってください」青年が立っていた。青年はリカコに傘を渡すと、もう一本の傘を開いた。「ありがとう」リカコは御礼を言った。その時、一台の車が水たまりの中を通り、二人に泥水をはねかけて走り去ろうとした。青年は傘をリカコに預けると、車の後を猛然と追跡を始めた。「何なのよ!」リカコは裕也といい、青年といい、自分をほったらかしにしたことで怒りが込み上げて来た。青年はいつまでたってもリカコの所へ戻る様子はない。
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