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「俺を商売道具にするような先輩なんて知りません。」
ツーンと顔を背けて冷たい態度をとると、先輩がオロオロするのでこっそり笑う。
「勝手に売りさばいた事は謝る!でもさ、唯人はそれだけ魅力と人気があって―…」
「…」
「そ、それに!写真部は部費が足りなくて苦労してたんだ。このチャンスを逃す手はないだろう?」
「…ぷっ。」
「…へ?」
必死で笑いに耐えていたが限界だ。
大笑いする俺を先輩が涙目で見つめてくる。
「あはははっ、先輩ってば捨てられた犬みたいになってるっ。」
「えっ、あの…唯人?」
笑いが収まってきたところで先輩に視線を戻す。
「別に写真が出回る事なんて気にしてませんよ。特に害がある訳でもないし。」
「…え、じゃあ…?」
「先輩の事からかってみたくなっただけ。ゴメンね?」
ニッと笑って先輩の顔を下から覗き込むと、真っ赤になった先輩がふるふると震えだした。
―…と思った瞬間、パシャッ
「…はい?」
「はっ、ゴメン!唯人の初めて見る表情だったからつい撮っちゃった。」
撮っちゃったってアナタ…
全然反省してないじゃないですか。
まぁ、いいけどさ。
「初めて見る顔ってどんなの?」
「んー…妖艶な美しさ?」
「分かるように説明しろ。」
さすがに先輩を足蹴にするのは常識に欠けるので、肩に緩いパンチをお見舞いしてやった。
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