2659人が本棚に入れています
本棚に追加
離れようともがくけど、顎と手首を掴まれてて逃げられない。
「たったこれだけで、君は逃げられなくなるんだよ。ふいに大勢で来られたらどうなるか、想像してみな?」
「―…っ、!!!」
たった1人も振りほどけない今の状況で、過去に何度か襲われかけた時の記憶が蘇った。
ゾッ
背筋が凍りつくような寒気が走る。
急に目の前の先輩が怖くなった。
…逃 ゲ ラ レ ナ イ…
先輩から目を逸らして身を固くすると、掴まれていた顎と手首が解放された。
ホッと安堵の息をつくと、先輩が俺を宥めるように優しい声を発した。
「ちょっと脅しすぎたかな。ゴメンね、大丈夫?」
「ん、平気…」
スッと先輩の手が伸びてきて、無意識に体がビクッと震える。
先輩は一瞬ためらったけど、そのまま俺の髪に触れて優しく撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!