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体育館の2階から1階の広いコートを見下ろすと、唯人のクラスはバスケの試合をしている最中だった。
「うわー、あいつヤル気無さすぎ…」
目標(ターゲット)の姫川唯人は、眠たそうに欠伸をしながらコートの端をのろのろと走っている。
走っているといっても、スピードは徒歩となんら変わらないのだが。
彼と仲が良いらしく、いつも一緒に居る片岡と片倉は唯人と同じチーム。
運動神経抜群の彼らのおかげで、実質は4対5だが圧勝。
片倉千紘が見事な3Pを決め、それを手を叩いて嬉しそうに笑っている。
「はは、子どもかっての。つーか、お前も参加しろ。」
自然とそんな言葉と笑みが漏れていた。
「―…あ。」
しばらく見ていると唯人にパスが回って来た。
一瞬面倒くさそうに顔をしかめ、仕方なくドリブルをつき始める。
「へー、運動神経はまあまあってとこか。」
敵のディフェンスを3人抜き、フリーだった片岡颯にパスを出す。
片倉の手から離れたボールは綺麗な弧を描き、スパッとリングへと吸い込まれていった。
自分でシュートを狙いに行かないあたりが唯人らしい、なんて思った。
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