2659人が本棚に入れています
本棚に追加
それから数週間、
唯人の観察を続けていた訳だが、この間のような事が度々起こった。
今も1人で、誰もいない階段でしゃがみ込んでいる。
そんな唯人の姿を見て、全てを理解した気がした―…
いつも寝ているのも体育で動こうとしないのも、体調が悪かったから?
こうなると分かっていたから?
唯人に着いて来ようとした片倉を止めて1人で出て来たのは、彼らに心配をかけたくなかったから?
―…ふと自分が今までに撮った写真の中の彼の姿を思い出す。
「全部、寝てるか笑ってるかだ。」
起きている時はいつも笑顔で、「体調が悪いのか」なんて疑問は抱かせない。
だからこそ、俺は興味を持たなかったのだろう。
いつも同じ顔で変化が無い。
でもそれは偽りで―…本当は誰も頼らずに、一人で苦しんでいたのだろうか。
差し伸べたくなる手をギュッと握り絞め、唯人とは反対方向へと足を進めた。
最初のコメントを投稿しよう!