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ガヤガヤと騒がしい教室を大股でズンズンと進んで行く。
俺の存在に気付いた彼は、読みかけの本をパタンと閉じた。
「やあ、一樹。ちょっとこっちへおいで…」
俺の手を引いて教室を出て行ったのは、写真部の部長で友人。
連れて来られた先は俺達の部室だった。
俺を机に座らせて、正面に立った彼はそっと俺の手をとった。
「このままじゃ血が出るよ。」
「え…」
自分の手に視線を落とすと、それは強く握られたままだった。
尚も力の入り続けた指を、彼は1本1本丁寧に解いていく。
「良かった、切れてはないみたい。」
「ん…さんきゅ。」
自分の声が、微かに震えている事に気付いた。
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