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差し出された俺のカメラを受け取って、優しく微笑む彼にピントを合わせる。
パシャッ
既に懐かしい音が、静かな部室に響いた。
「最初に撮るの、姫川君じゃなくて良かったの?」
少し複雑そうに笑う彼の頭を軽く小突く。
「ばーか。」
「はぁ!?」
ベーっと舌を出して軽口を叩けば、小突かれた頭を押さえながら少し怒りを表した。
「いいんだよ。大事なことに気付かせてくれた礼だ。光栄に思えよ、親友♪」
ニィっと笑って机を飛び降りてドアに向かう。
早くアイツを撮りたい。
「…親友、か…」
「え?」
後ろで何かを呟かれた気がして振り返る。
「悪い、なにか言った?」
「いや…何でもないよ。姫川君の所へ行くんでしょ?早く行っておいで。」
そう言って笑顔で手を振る友人を残し、俺は今日も彼を探して校舎を駆けまわる。
これは俺に『パパラッチ先輩』なんてふざけたあだ名がつく、少し前のお話―…
■綾瀬一樹side END
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