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顔を上げた先には怒った湊の顔。
鋭い眼が俺を射抜く。
湊のこんな顔、初めて見た。
「ごめんなさい…」
いつもと違う湊に戸惑って、どうしたらいいか分からなくなった俺は、ポツリと言葉が零れるように謝っていた。
「迷惑かけて…ごめん。」
そう言って湊から視線を逸らした瞬間、体を壁に打ち付けられた。
「―痛っ、」
背なかを打った痛みに顔を歪ませていると、湊が俺に覆いかぶさるように壁に手をついた。
「唯人。」
「―…ぇ?」
ビックリした。
名前を呼ばれて見た湊の表情は怒りじゃなくて、酷く悲しそうな顔だったから。
「ちょ、湊!なんで…」
思わず伸ばした手を痛いほどの力で掴まれた。
「唯人…どうして俺が怒ってたと思ってる?」
「え?それは…3年に絡まれた挙句、湊にいっぱい迷惑かけたから…―痛いっ!」
俺の小さな叫びでハッとした湊は手に込めていた力を解いた。
「ごめん。」
「いや…大丈夫。」
今度は握られたせいで紅くなった俺の手首を優しく擦る湊。
…今日の湊はどうしたんだ?
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