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「唯人、落ち着いた?」
俺の腰に回された腕に少し力が入り、俺と湊の密着度が高くなる。
「うん」って答えたら「そっか」って安心したような声の呟きが聞こえた。
背中に感じる湊の体温が心地いい。
「もー大丈夫。急に泣いたりしてゴメンな。何かテンパっちゃって。」
ははっ、と乾いた笑いを見せると湊は黙って俺の頭を撫で始めた。
「湊?」
「無理するな。」
「え?」
「…無理に笑うな。誰も見てない。」
「…」
「元気が戻るまで、唯人が望むようにしてやるから。…俺はどうすればいい?」
あぁ、そっか。
こうして後ろから抱きしめてくれてたのは、俺がどんな顔をしてもいいように、わざと見ないでいてくれてるのか。
湊の優しさに、胸が熱くなる。
やばいなー、また泣いちゃったらどうしてくれんだよ。
「わがまま…言ってもいい?」
「ん。」
いつも通りの、短いけれど優しい返事に、ふっと小さな笑みがこぼれた。
「じゃあ…しばらくこのままがいい。あと少しで良いから、ギュってしてて…」
「ん。唯人の気が済むまで離さない。」
迷惑じゃないって。
わがまま言っていいって。
少しじゃなくて、ずっとでもいいって。
湊の全身から伝わってくる気がした。
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